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千葉県印西市はなぜ「データセンターの銀座」と呼ばれるのか


世界のIT企業が注目している「INZAI」

皆さまは「印西市」をご存じでしょうか?
印西市は千葉県の北部に位置する市で人口約11万人の商業中心都市です。
そんな印西市ですが、現在「データセンターの銀座」と呼ばれるほどデータセンターの建設が相次いでいます。その中で近頃特に話題となった事例を少しだけご紹介します!

google

googleが日本で総額1000億円の設備投資をする計画を公表しており、その一環として印西市でのデータセンター建設をすることとなりました。このデータセンターの運用が始まれば、Gメールやマップ、動画共有サイト「YouTube」をはじめとした各種サービスに関わる国内外の膨大なデータを処理・保存し、より安定的で快適なサービスを提供できるとされています。 2023年4月13日に当該データセンターは開設していて、googleJapanBlogには、コーポレートカラーをあしらった外観が公開されています。
このGoogleデータセンターの開設が、データセンターのまち「INZAI」が国際的にブランド化したことを象徴するニュースとなりました。

https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/inside-google/data-center-in-inzai-city/

大和ハウス工業

国内企業では大和ハウス工業が2022年にデータセンターブランド「DPDC(ディープロジェクト・データセンター)」を立ち上げ、約1000億円を投じて「DPDC印西パーク」の開発を開始しました。約27万㎡の敷地(東京ドーム6個分)に合計14棟、総延床面積約33万m2の開発を25年までに進めるとしています。完成すれば国内最大規模のデータセンター設備となる見込みです。

https://www.daiwahouse.com/about/release/house/20220329190642.html

そのほか印西市でのデータセンター新設を明らかにしているのは、英Colt Group(コルトグループ)のColtテクノロジーサービスや、米Digital Realty Trust(デジタル・リアルティ・トラスト)と三菱商事の合弁会社であるMCデジタル・リアルティなどがあります。まだ公表はしていないものの、印西市への進出が噂されるデータセンター事業者も存在します。

なぜ印西市にデータセンターが集まるのか

東京都心や国際空港へのアクセスが良い

データセンターというと僻地にある広大な土地を活用して建設されるイメージを持たれるかもしれませんが、印西市は日本橋40分台、品川まで50分台で行くことができます。
また、成田空港まで直通20分台で行くことができます。印西市には外資系の企業が自社で建設したデータセンターがあるため、このような交通の便も選ばれるポイントになっています。データセンターは稼働し始めたら放置していてよいものではなく、それなりに人の出入りがあるため、地方や海外から来ることを想定した場合に国際航空と都心の間に位置しているという立地の良さが評価されています。

災害リスクが低い

データセンターが集合している土地はその大部分が標高20~30メートル前後の下総台地の上に位置しており、加えて沿岸から30㎞以上離れていて氾濫の恐れがある大きな川なども無いことから洪水や津波などの水害のリスクが低いと言われています。
また地盤が固く、活断層も見つかっていないため地震による被害が起こる可能性も低いです。

電力インフラが整備されている

データセンターは、大量の電力の供給を24時間365日必要とする場合がほとんどです。そのため印西市には非常に高電圧で高容量の電気を高速で供給できる設備を東京電力が整備しています。
印西市と隣接する船橋市「新京葉変電所」から印西市「印西変電所」を結ぶ10㎞にもおよぶ巨大トンネルを完成させ、大量送電を実現しました。これにより、2024年現在で既存の変電所と合わせて120万キロワットの電力を供給していますが、27年には230万キロワットの供給増強を目指しています。これがどれほどの規模の数値かというと、たとえば山梨県の電力需要が約100万キロワットなので、千葉県印西市だけで山梨県2つ分の規模の供給力があることになります。

増える続ける印西市のデータセンター需要に伴う課題

電力需要に供給が追い付いていない

データセンター需要に対して電力供給が追い付いておらず、印西市での新設・増設の予定が増加する中で、現状の供給量である120万キロワットを超える数の問い合わせが既に来ており、新設の巨大トンネルが稼働しても今後想定される電力需要には足りない状況です。現在更なる変電所の増設が検討されていますが、電力供給設備の増設が間に合わなくなる恐れがあります。

近隣住民との軋轢を生む可能性

印西市の街中で大規模工事が行われていて、データセンターが立つのではないかと不安に思う住民の声が少なからず出ています。増設・新設が進み愛着のあった商業施設がデータセンターに……ということがあれば住民に不満が募る可能性もないとは言えないでしょう。
実際に千葉県流山市のデータセンター建設計画が地域住民の反対で頓挫した事例もあります。原因は住宅隣接地に高さ28メートルの建物が立つことが不満だったことに加え、工事の進め方やデータセンター運用者への質問をしても具体的な答えが返ってこなかったことに不信感が高まったからだそうです。
このように物流施設のような大型車の往来や、製造工場のような騒音が無かったとしても、データセンターは「得体の知れない建物」として住民に忌避感をもたれることがあります。
一方で、地域住民にとってのメリットも存在します。
印西市の固定資産税収は令和3年度段階で116億越までに激増しており、その大部分がデータセンター進出によるもので、印西市では保育園や公園の建設が多数進められています。さらに、先ほどの大和ハウス工業が着手する「 DPDC 印西 パーク」が開設されれば、追加で年30億円の税増収が見込まれます。
地域住民もこうした恩恵は理解しているため、印西市では今日に至るまで大きな対立には発展していないのかもしれません。

終わりに

国内事業者のデータセンター新設・増設に関する建設投資予測が発表されており、今年で5000億円を超える見込みとされています。これは前年の2023年とくらべて約1.55倍という大幅な拡大となります。
さらに2026年・27年と毎年5,000億円を超える投資規模が継続すると予測しています。

https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ51165523

また、クラウドサービス世界最大手の米アマゾンウェブサービス(AWS)が、2027年までに日本で2兆2600億円を投資する計画を発表しました。投資先の中にはデータセンターの増設も入るそうです。AWSは既に複数のデータセンターを印西市に設置しているため、印西市は増設地の有力候補となるでしょう。
AIやクラウドサービスによるデータセンター需要が高まる中、それに伴いDCIMの需要も増加することが予想されます。データセンターの新設・増設を検討されている景気のよろしい企業の方々、乗るしかありません!このビッグウェーブに!
そしてその際には「DCIM」や「garmit」というキーワードを思い出していただけたら幸いでございます。